はじめに
「関係は断った」──この言葉ほど、政治の世界で軽く響くものはないのかもしれません。
萩生田光一氏をめぐる旧統一教会（現・世界平和統一家庭連合）との関係は、2022年の夏以降、幾度となく報じられ、やがて「断絶宣言」によって一応の終止符を打ったかのように見えました。
しかし、政治と宗教、そして資金が複雑に絡む現代日本の構造を覗き込むと、その“断絶”の線がどこに引かれているのか、誰にも正確には見えないのです。
信仰の影が政治を撫でるとき
報道によれば、萩生田氏は教団関連イベントへの出席、関連団体「世界平和女性連合」への訪問、さらには選挙ボランティア支援の受け入れといった接点を持っていたとされます。
それ自体は「違法」ではありません。
しかし、政治的支援と宗教的影響がひとつの回路を形成するとき、問題は単なる関係性の域を超えます。
なぜなら、宗教団体が票や労力を提供し、政治家が政策や影響力を返す——この循環構造が、日本の政治の奥深くに長く沈殿してきたからです。
断絶宣言の裏側には、そうした「長年続いてきた相互扶助の網目」を切断するという、容易ならざる作業が隠れています。
裏金問題との奇妙な重なり
この構造をさらに暗くしているのが、自民党を揺るがせている裏金問題です。
表に出ているのは資金の不透明さや政治資金規正法違反の疑いですが、その水面下では「資金の流れを誰が操っているのか」という問いが常に燻っています。
興味深いのは、裏金問題で名の挙がる一部議員が、旧統一教会との関係でも取り沙汰されている点です。
もちろん、すべてが直接的に結びつくわけではありません。
しかし、資金・信仰・選挙支援という三つの要素が重なり合う地点が、確かに存在しているのです。
この「重なり」は偶然か、それとも構造的必然なのか。
そこにこそ、日本政治の“見えない手”の存在を感じざるを得ません。
社会の無関心が編む「沈黙の共犯」
もっとも恐ろしいのは、政治家でも宗教団体でもなく、私たち市民の側にある「鈍い沈黙」かもしれません。
断絶の言葉を聞けば安心し、記者会見での謝罪を見れば納得する。
しかし、その都度、問題の根は地下に潜り、より複雑な形で再生を始めます。
政治と信仰、そしてカネ。
それらを結ぶ見えないパイプラインを断つには、誰かの勇気ではなく、社会全体の“覚醒”が必要なのです。
まとめ
萩生田光一氏をめぐる旧統一教会との関係も、裏金問題も、単なる「スキャンダルの一形態」として処理されがちです。
しかし、それらはひとつの巨大な問い——
断絶を宣言する政治家。
真相を追うメディア。
忘れていく国民。
この三者が織りなす沈黙のトライアングルの中で、真実は今日も静かに沈み続けています。
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